下林明正のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

親不孝介護 を読んだ

ライフプランニングなどにあたって避けて通れないな、と思ったので読むことにした。

実際に介護をするのは(運が良ければ)15~25年くらい先の話だと思っているので、細かい制度の話とかはどうせ変わるのであまり興味が無くて、大雑把にどういう気持ちで構えていれば良いのか知りたいというモチベーションだった。

きっかけとしては

kaigo.homes.co.jp

を読んでこの本に興味を持って、(在宅介護はしたくないと思ってるので)自分が信じたいものを信じようとしている感じがしてどうかと思ったけど、まあ正直他にそんなに興味を持てる介護関係の本も無かったのでこの本を選んだ。

読んでみた感想としては、すごく良かったけど読んでて精神的に辛くなるような内容だった。 なんだろうな、やはり人間がゆっくりと根本的に壊れていく様子というのは辛いものだし、結構自分の祖父母にも当てはまるような話も多くて感情移入してしまっていたのかも知れない。

基本的には、

  • 子供が親と一緒に住んでがんばって介護するのは子・親・行政にとってLose-Lose-Lose
  • 問題が軽微な段階でプロの支援を入れる方が、親にとってはクオリティの高い介護を受けられ、子にとっては負担が少なく客観的に親に接することができ、行政にとってもコスパの良い支援ができるのでWin-Win-Win
    • そして、自分1人でそうした決定をできる一人っ子は、実は最高

というような内容だと思う。

介護は治療ではなく撤退戦、ということも繰り返し書かれていて、確かに自分もどこか治療の余地があるのではないかといったことをぼんやり思っていた気がする。多分それこそそう思いたいから思ってる、以上のことは無いだろう。 そしてこの撤退戦は、ビジネスマンの持つ成果主義的・成長主義的・自責思考的なマインドと非常に相性が悪いので発想を転換する必要がある、という指摘も納得感があった。

そして自分はこの本を読んだだけで辛くなってるくらいなので、多分仮に同居して介護したらまず間違いなくおかしくなるだろうな、ということも想像できた。

そういうわけなので、会社も介護休暇的なことをやるときはうまくやらないと燃え尽きて離職リスクがあるよ、という話もたしかに、となった。家族主義的な価値観がけっこう無批判に受け入れられてるような気がするけど、そうじゃないよね、というところは冷静に向き合っていきたい。

あとは、別にお金をかけたりすれば良いというわけでは無く、本人の価値観に合わせた介護をするのが本当の幸せに繋がる的な話も繰り返されていて、その中でも「たばこを吸って幸せな人生とたばこをやめさせられて不機嫌な人生のどっちが良いですか?」という話も刺さった。多分これは、実際にたばこをやめさせられた祖父を見てるのもありそう。 別の何かで見かけた「人生には毒だけど、毒の無い人生なんて面白くも無い」的なメッセージも自分の印象に残っていて、人間は別に合理性のために生きてるわけじゃないよね、と思う。

そういう意味では、子供以外の方法で支援の仕組みに自分の価値観を伝える方法をどうするのか、というのは自分が介護されることが現実味を帯びてきたらちゃんと考えておいた方が良さそう。

まあそんな感じで、得たいと思っていた心構え的なところは存分に得ることができた気がするので、とても満足しました。

多分本当はバランスを取る意味で真逆の主張をしている本も併せて読んだ方が良い気がしてるんだけど、そういう本は軽く探した限りでは見つけられなかった。 仮に見つかったとしても、ちょっと連続して読む元気は無い……。

将来的に福祉がどうなってるのかとか色々懸念はあるけど、一方で技術の進歩による変化もあると思うので、その辺はまだあまり深く考えずにいようと思う。


そしてこの本を読んで人生の終わりというものを改めて意識させられて、介護とは関係無く自分も自分の価値観にちゃんと向き合わないといけないな、という気持ちを強められた(そんなようなことも本に書かれていた)。

多分これまではWill, Should, CanみたいなやつでいうとShouldやCanを中心に広げてきたけど、なんかそろそろそっちのほうはある程度見えてきて自己理解も十分に深まった気がするし、なんにせよ時間は有限なので、もっとWillの方に目を向けてみても良いんじゃ無い?という話かも知れない。

本の最後の方でも収益最優先をやめたら収入が逆に増えたみたいな話も出てきてて 仕事が楽しいことは大事なことだなと思い直した - 下林明正のブログ で考えてたような話だなと思ってるんだけど、Willに目を向けることが結局ShoudやCanも広げるきっかけにもなるかも知れないし、ならないかも知れない。 どうせ誰も自分の人生の責任は取ってくれないし、VUCAってことで仮説を持って色々やってみたら良い気がする。

ここ半年強くらいライフプランニングについて考えてみているけど、多分そういう何を大事にするのかというのが核心なんだと思う。

そしてこういうこと考えてるのめっちゃおっさんっぽいと感じるけど、多分また10年後はあのころは若かったなと思ってそう。