自分はブルガダ症候群と診断されており、ICDを埋め込んでいます。 未来の自分や他の誰かの参考になればと思い、書き残しておきます。
いちばん辛かった一週間
実は、ICD交換手術を受けた - 下林明正のブログの退院翌日に心房細動が起きて、病院で治療を受けていた。
うーむ一難去ってまた一難
— shimobayashi (@shimobayashi) 2025年12月1日
その後も一週間弱ほど気分が悪い状態が続き、毎朝変な時間に目が覚めるし、期外収縮のような症状が出る日があったりという感じだった。
今日は久しぶりに普通の一日を過ごせたけど、普通に過ごせるだけでマジ感謝みたいなマインドになってる
— shimobayashi (@shimobayashi) 2025年12月2日
今日もちょっと身体の様子がおかしい。生活はできそうだけど。うーん
— shimobayashi (@shimobayashi) 2025年12月2日
さすがにおかしいので一度病院に行こうと思っていたら、その日についには身体に埋め込んだICDによる電気ショックを自覚する瞬間があり、救急車にきてもらって緊急入院した。
入院してから分かったのだけど、実は最初の心房細動もただの心房細動ではなく心室細動に対する電気ショックが起きたあとの不整脈状態だったようで、別の日々にも無意識状態の間に電気ショックが何度も起こっていたらしい。 そりゃ、つらいわけだ。
心房細動が起きて入退院していました - 下林明正のブログに追記してなかったけど、実はこのときも心房細動じゃなくて心室細動に対する電気ショックが起きたあとの不整脈状態だったということが後になって分かっていて、同じような診察が繰り返されてしまっていた。
感覚の海に浮かぶ自分という筏
電気ショックを自覚して救急車を呼んだあとは心室細動は起こっていなかったようだったけど、不整脈の苦しみは続いていた。
そして心室細動を避けるために脈拍を上げる点滴を入れてもらったのだけどそれがそのときは良くなかったようで、動悸が強くなってきて散発的に心室細動などとは別の発作が起きるようになってしまった。 この発作というのが説明が難しいのだけど、突発的に1~3秒ほど身の置きどころが無いような感覚に襲われてうめきながら勝手に身体が動いてしまう、というものだった。 無理やり例えるなら、足が痺れたときの感覚に近くて、あれが突然全身に強くやってきて痛みなどは無いけどわけのわからない姿勢にどうしても身体が動いてしまう、みたいな感じだった。
心電図的には問題ないということだったので、原因は精神的なものだったのか他の身体的な何かだったのかは結局よく分からないままだった。 意識は明瞭なのに自分の身体のコントロールが効かないというのは、いつ味わっても怖い。
もはや何もできずただ天井を見ながら耐えるしかないというような状況になってしまって、不安なのでベッドの柵をずっと掴んでその発作に備えていた。自分でもよく分からなかったけど、柵を掴む手の感覚は発作が起きても確かさがあるので、それが心の拠り所になっていたんだと思う。
そうしているとふと、ボートでする釣りのことを思い浮かんだ。 海がシケていると結構強烈にボートが揺られて転覆するかと思ったりもするのだけど、案外転覆しない(もちろん転覆してたらこうして文章を書いていることもないけど)。 そして基本的に耐える以外にできることはないので、手すりを掴んでただやり過ごす。 あの時の不安感に近いような気がした。
不整脈や突発的な発作による強い不快感は、波のようなものだと思うようにした。 そして自分は筏のようなもので、強い波で少し壊れて安定感を失っているのだと考えた。 万が一転覆してしまっても、病院にいるのだから助けてもらえる。 あとはボートで釣りをするときみたいに、手すりを掴むことくらいしかできない。 そういうものの見方をしてみたら、少なくとも致命的な状況ではないという認知になったのか、少しだけ気持ちが楽になった。
前回の入院時に夜と霧や心療内科医が教える本当の休み方を読んでいたので、妻のことを思い起こしてみたり、自分の好きな夜釣りの光景を思い浮かべたりして、気を紛らわせていた。 だけど途中でトイレに行くために身体を起こそうとしたらひどい動悸がして動けなくなったりもして、不安な時間が続いた。
そうして何時間も耐えているとある程度は発作や不整脈も落ち着いてきたので、精神薬をもらって何とか寝ることができた。 自分の場合は心室細動は就寝時に起きることがほとんどなので(発作が起きるといつもだけど)寝ること・リラックスすること自体が怖くなってしまっていた。けど、新しく出してもらった睡眠薬がよく効いてくれたように思う。睡眠薬はあんまり身体に合わないことが多かったので、とても助かった。 これも、ボートでする釣りに例えるなら酔い止め薬のようなものだと思うようにした。
周囲への、今と過去に対する感謝
そこからは不安とともに一週間ちょっと入院をして様子を見てもらっていた。
前回の手術入院とは違って突然の入院だったので準備などもまったくできておらず、妻にかなり助けてもらった。妻自身も負担が大きかったようで、周囲にも助けてもらっていたようだった。また、自分も職場などにもフォローをしてもらっていた。もちろん医療関係者の方々も含め、もろもろ、本当にありがとうございました。 書類関係の処理も色々と必要だったので、念の為結婚しておいたのも本当に良かった。
入院中にまんが日本昔ばなしをみていたら郷愁的な気持ちになってきて、ふと脳内で「やさしかったあのころに帰りたい」と呟いてみたら、それをきっかけに30分間ほど断続的に泣いてしまった。 子供の頃は自分にこんな病気があると思ってなくて、苦しい思いをするなんて想像もしてなかった。 でも泣きながら気付いたのは、帰ることはできなくても帰りたいと思えるような過去はたしかにあったということと、そうした時間を過ごさせてくれたことへの感謝だった。 そう思うと悲しくて泣いていたのかうれし泣きしていたのかまぜこぜになってきて、少し気分が軽くなったのを覚えている。
退院後にも、母親が顔を見に来てくれた。たぶん入院中は負担をかけないようにあえて連絡をしてこなかったのだと思うけど、会ってみて本当に心配をかけていたんだなと感じたし、誰かが心配してくれているという事実も心の支えになった。
少しずつ筏を直していく
キニジン服薬の再開
そもそも今回心室細動が起きてしまった原因がはっきりしないが、おそらく前回の手術入院ついでにキニジンの断薬をはじめたことだろう、となった。
キニジンが本当に効果があるのか分からないし仮に効果がないなら飲まないほうが身体にも良いということで、元々自分自身も長期的な健康を重視してキニジンに限らず減薬を希望してきたこともあり、医師の提案がきっかけだったものも最終的には自身の意思で承諾していた。 そして手術入院期間中も減薬による問題がなさそうか心電図の監視が行われていたが、どうやら入院中には問題は見つからず、退院した直後から心室細動が起きるようになってしまったということらしい。
キニジンの血中濃度が原因ではないかと言われたものも、正直そのあたりもはっきりとした原因は分かっていない。 個人的には、自分の場合は安静時に心室細動が起きることがほとんどなので、病院だと気持ちが落ち着けなかったのが自宅で落ち着いた影響もあるのでは?などと思っているけど、それも素人考えに過ぎない。 ブルガダ症候群自体が「症候群」と言われているようにまだ解明が進んでいない病気だという理解なので、はっきりとしないのは仕方がないことかなと思っている。
緊急入院時からキニジンの服用を再開し、以前に減薬していたのも少し量を戻して、今のところ退院後自宅で一週間ほど過ごした時点では再度心室細動は起こってないと思う。 キニジンを飲み始める以前はしばしば心室細動が起きてたけど飲み始めてからは13年ほど?ほぼ発作が起きていない実績はあるので、身体的に大きな変化や交換したICDの不具合などなければ以前くらいの生活水準には戻れると期待している。
リモートモニタリングへの不信と期待
新しく身体にいれたICDはイベントがあったらサーバーに送信してくれる機能があるのだけど、今回は数日間にかけて何度もイベントがあったにも関わらず自分に知らされることは無かった。
正直、もっと早い段階で通知がきていればもっと素早く穏やかな対応ができていたであろうことは想像に難くなく、リモートモニタリングの主体が日本ライフラインなのかソーリングループなのか知らないけど運用を改善して欲しいと思った。
こういう感じで特に役に立たないのであれば、むしろこの機能はICDのバッテリーを無駄に消費するだけで交換手術の頻度を上げてしまうだけとなり、無い方がマシということにもなりかねない。
聞いた話では、交換直後は(理由はよく分からないが)あまりイベントをみてないらしく、通常なら1日以内に通知がくるような仕組みらしいので、せめて今後は役立ってくれることを期待している。
現状、精神は不安定
身体的には心室細動は再発していないようで安定しているけど、精神的には正直不安定な状態が続いている。 心房細動から仕事に復帰して一週間のふりかえり - 下林明正のブログや 心房細動から3週間ちょっと経ったふりかえり - 下林明正のブログによると去年のときは3週間時点くらいである程度気持ちが落ち着いていたようだけど、この文章を書いている2週間程度経過時点ではまだあまり落ち着いていない(こういうことが後で分かるので、やっぱり書いておいて良かった)。
薬の効果が薄まるせいか大体変な時間に目が覚めるので、発作が起きたのか?と毎回不安になってしまう。けど、不整脈の気持ち悪さは感じないし、血圧計で不整脈判定もされてないし、リモートモニタリングからの通知もきてないので、単に精神的な問題だと思っている。 (ちなみに、以前の発作のときからGarmin vivosmart 4を装着する習慣は続けていたが、明らかに不整脈が起きていて血圧計でも不整脈判定されるようなときでもvivosmart 4はほとんど不整脈判定してくれなかったので、心拍を参考値として見たい運動時以外には装着しないようになった。)
今回はICD交換手術をした手術痕の痛みや違和感もまだ残っているし、一週間弱かけてじっくりと苦痛を受けていたので、回復に時間を要するのは自然なことだと諦めている。 キニジンを飲み始めて体調が落ち着いて数年経つくらいまでは基本的に寝るということが怖かったので、それを考えると以前の水準に戻るには下手すると年単位かかるかも知れない。 正直色々な意味で今後どうなるかよく分からないけど、今は安心材料を集め直して筏を補強しなおしているような最中だと思うので、とにかく無茶はせず、かといって塞ぎ込まず、つらいときは薬を飲んでやり過ごし、時間をかけながら経過を見守るしかないと思っている。
薬以外にも、本で読んだメソッドだったり、妻からもらったチワワの刺繍が入ったポーチをなでたり、いい匂いのハンドクリームを手に塗ってみたりと、入院中からあの手この手でなんとか平静を保とうとしている。 案外そういうことにも効果を感じているので、もっと色々と積み重ねたい。
今後
キニジン以外の改善策として心外膜アブレーション手術の検討をはじめているけど、現時点では特に言えることはない。専門の病院で相談していく予定。
バイクにもしばらく乗れないということになってしまったので、精神的にある程度安定したとしても釣りなどに行く方法は考えないといけない。 夏だったら自転車で走っても良いけど、冬の夜は特にひどく汗冷えするので難しい。 このためにわざわざ電動アシスト自転車を買うのはおおげさな気がするので、レンタサイクルか、電車釣行か、仲間に頼って拾ってもらうか……という感じ。 バイクで走ること自体も楽しいと思い始めていたところだったので、しばらく乗れないのはもどかしい。
最近、朝の散歩をはじめてみた。もともと有酸素運動不足を感じていたことに加えて、運動が直接不整脈の予防になるわけではないらしいけど間接的には期待できるらしいということも聞いて、ようやく重い腰を上げた。
焦ってもしょうがないので、できることを無理のない範囲内でやっていこうと思う。