下林明正のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

リモートチームでうまくいく を読んだ

「強いチームはオフィスを捨てる」を読んだので、次はこの本を読むことにした。

リモートチームでうまくいく

リモートチームでうまくいく

  • 作者:倉貫義人
  • 発売日: 2016/01/29
  • メディア: Kindle版

「論理出社」と「物理出社」、「社長ラジオ」、「リモート・ハッカソン」…etc、画期的なビジネスモデル「納品のない受託開発」でソフトウェア業界に旋風を巻き起こした著者の結論―。「リモートチーム」でマネジメントの本質が見えてくる!

理由としては、時流の影響はもちろんのこと倉貫さんの前作を昔読んで結構良かった印象があるのと、ソニックガーデンは以前から日本で「リモートワークという働き方そのもの」を強く売りにしている企業として印象に残っていたのでどんなもんだろうと思った、というところ。

全体的な印象としては、「強いチームはオフィスを捨てる」を和風にアレンジしたもの、という感じだった。「強いチームはオフィスを捨てる」は生産性にフォーカスして古い習慣を捨て去ろうという論調が強かったように思うけど、この本はオフィスワークの雰囲気や価値観をリモートワークである程度再現することで無理なく新しい働き方に移行できました(そして様々な気付きがありました)、という内容だと受け取った。なので、オフィスワークしかしていなかった日本の企業がリモートワークへの移行を検討する際にはもしかしたらこちらの方が参考になるのかも知れない(物理オフィスと論理オフィス混在の話だし)。

以下、主に印象に残っている文章。

リモート 飲み 会 を うまく 実施 する ポイント は、 参加 者 の 全員 が リモート で ある こと と、 参加 人数 を 4 人 程度 までに する こと です。

以前自社のリモート雑談会に参加したときは人数が多すぎてうまく話ができなかった。コミュニケーションパスは指数関数的に増えるものなので、4人までにするのは良さそう。

経営チーム内の議論や相談などもオープンな場所でしたり、オンラインでの打合せ(会議)を傍聴することもできます。一般的に考えると、打合せに参加するのに発言しないなんて意味がないと思われるかもしれませんが、 打合せの様子を聞きながら仕事をすることができるのは、リモートならではのメリット です。  リモートワークを主体にしたことで、会議室という制約から解放されて、会議は誰でも参加、見学できるようになったのです。物事が秘密裏に決まることがなくなって、より公平な経営ができるため、会社としてはむしろよいことでしょう。逆に、 社内の情報をオープンにできない企業文化では、リモートチームは難しい のかもしれません。

自分の知らないところで自分に関することが決まっている、ただ激流に身を任せるしかない……と思うことは少なくはない。そういう意味では、このプラクティスには賛成。一方で、実際にはオープンにするべきでない人事情報の取り扱いをどうするかとかそういった障害が多々あるはずで、オープンにできる会議の種類はある程度限られてしまうのではないか、という気もする。現実的には、オープンにできる会議をなるべく増やして録画データなどを共有していく、というのがコスパ良さそう。 あとは1on1のようなクローズドであるからこそ本音を話せるという会議設計もあるはずなので、何でもかんでもオープンであるべきとも思わない。

あらゆる情報をオープンにしたことで、メンバーは自分からアクセスすれば、いつでも経営情報を見ることができる状態なので、主体的に見る人にはいっそうアクセスしやすくなり、そうでない人は、ただ待っていても情報が自動的に降りてくるわけではないので、必要ならば見ざるをえません。そうした環境が、人を受け身から主体的に動くように変える力があるのです。

これはどうだろう……情報へのアクセシビリティへの配慮が無いとこの主張は成立しないと思っている(当事者しか分からないような全く整理されてない情報の山をドンと置いて「俺は共有したからね、あとはヨロシク!」というのは許されないと思う)ので、そのあたりうまく整備できるなら望ましい状態かな。

リモートチームでこぼれ落ちやすいのは、働く人の感情を共有する時間 です。そこで、日記という仕組みで、なにをしているかだけでなく、どんな気持ちで仕事に取り組んで、仕事中にどう感じているのか、といった ウェットな情報も共有する のです。書く本人にしても、閲覧するのは社内の人間だけに限定されているので、気軽に書くことができます。

自分はオフィスワーク時代にウェットな情報共有をしていたかというとさほどできていなかったような気もするけど、それはさておきした方が無用なすれ違いを減らすことができるという点で有用なのだと思う。一方でこれは「弱さを見せる」ことにもなるので、そういったことを是とする文化醸成や相互信頼の構築が前提として必要になりそう。そしてそれは意識的に取り組まないと実現は難しそう。

定年退職まではずっと働き通しで、定年になったら一気に遊ぶというよりも、若いうちから仕事と遊びをバランスよく両立させたほうがよいですよね。

しかし、これからの人口減少社会においては、ずっと働いていかなければいけない状況になる可能性が大きいのです。ずっと働くのであれば、好きな仕事を選び、好きな場所に住み、好きな人たちと働けたほうが幸せだと思います。

これは価値観の問題だけど、個人的には強く共感。未来は予測できないし、いつ死ぬか分からないし。

オフィス に あっ て リモート に なかっ た もの は「 存在感」 と「 雑談」 だっ た の です。 そこで 私 たち は、 リモート ワーク でも 仲間 同士 が 存在感 を 感じ て、 普段 から 何気ない 雑談 を 気軽 に できる よう に する ため の 工夫 に 取り組ん で き まし た。

リモートワーカー たち が 集まっ て 一緒 に 働く 場所 として の「 リモートチームプレイス」 という コンセプト を 実装 し た ツール は、 まだ 世の中 に しっくり くる ツール が なかっ た こと も あっ て、 また 私 たち 自身 が ソフトウェア 開発 を 得意 と し て いる こと から、 自分 たち の 使う リモートチームプレイス は 自分 たち で 作る こと に し まし た。 それ が「 Remotty」 です( http:// www. remotty. net/)。

このあたりが「強いチームはオフィスを捨てる」との違いを個人的には一番感じた点。

最近読んでおもしろいと思ったエントリーに

note.com

というものがあったけど、ここで述べられている「臨場性」の概念だなあ、と思った。

もっとも、一部の界隈で言われているような「ウィズコロナで社会は一気にリモートワークに移行」的な事態は予想以上に進まないだろう。それはIT化以降も、この社会では依然として、固定電話やFAXが重用され続けているという事実からも予測できる。和風デジタイズは、どこかで必ずアナログとのハイブリッドになるようだ。東京都が医療機関にFaxで感染者数や死者数等の情報を送らせそれを手作業で集計していると聞いた時は軽いめまいを覚えたものだが、単なる技術的な遅れ以上に、そこに「手作業の臨場性」への固執を見て取るのはうがち過ぎだろうか。

Remottyはこんなひどいシステムではきっと当然無いはずだけど、ハイブリッド感はあるよね、という感じ。 良し悪しは置いといて、こういったアプローチのほうがリモートワーク・オフィスワーク混交の企業や、オフィスワーク前提で設計をしていた企業がリモートワークへ移行していくにあたっては、きっと無難なんだろうなと思う。


この本自体は2015年末の本なので、きっとソニックガーデンも今ではもう少し違うやり方・考え方になっているのではないかと思う。もうオフィスも解約してたはずだよな……と思ったら、そのあたりまさにここで補足されていた。

www.sonicgarden.jp

「強いチームはオフィスを捨てる」のやり方はかなり突き抜けた感じだったので、フルリモートワークの実現方法の1つとして本書のようなやり方もあるということが分かって良かった。