下林明正のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

強いチームはオフィスを捨てる を読んだ

引き続きリモートワークに関心があるので関連書籍を読んでみています。前作「小さなチーム、大きな仕事」は未読です。

どこにいても世界中の人と簡単にコミュニケーションできるのに、なぜオフィスが必要?人生の大切な時間を通勤に費やすのはナンセンス!優秀な人材と一緒に働きたければ、物理的距離なんて関係ない!前作『小さなチーム、大きな仕事』で圧倒的な支持を集めたカリスマ経営者たちが、今回取り上げたのは「リモートワーク」。世界に散らばる36人の社員を率いて、数百万人ものユーザーにふさわしい働き方を伝授する。会社や組織にまつわる固定観念が、根底からくつがえる!

リモートワークを取り入れることで生産性が上がり、生活の質も上がる。リモートワークを取り入れるときにはこうすると良い、という内容の本だった。

生産性上がる根拠としては、オフィスにいると割り込みばかりで仕事にならないがリモートワークなら割り込みをコントロールできるのでまとまった時間が確保できるため、というのが中心だったように思う。 言い換えると、割り込みに対処し続けるような仕事をしている場合はさほど生産性は上がらさそう。

半年くらい前に自分は新しい業務を始めて分からないことが多かったので、当初はついつい他人に割り込みをかけていたような気がする。新型コロナウィルスの影響で一時的にリモートワークになってから割り込むのは難しくなった。リモートワークのほうがまとまった時間を取りやすいというのは基本的にそうだろうと思う。

まとまった時間を確保するために、いくつかのノウハウも紹介されていた。印象に残っているのは以下の2つ。

数時間待てる内容の質問なら、メールで投げておく。数分以内に返事がほしいなら、インスタントメッセージ。本当に一分一秒を争う緊急事態なら、電話をかけて作業を中断

これは本当にやるべきで、自分がマネージャーだったときは似たようなルールを定めていた。 違うところがあるとしたら、今の会社はメールはあまり使わないカルチャーなので代わりに日例へ相談事項として持ち込むようにしていた。

僕らの経験上、毎日4時間はみんな同じ時間に働いたほうがいい。

これは、1日8時間働くなら4時間は割り込みがあり得る時間としておく、という意味だったと思う。今の会社は全員コアタイム10時~19時という状態なので、こうはなっていない。たしかに、コアタイムが長すぎると会議が一日中まばらに分散してまとまった時間が取れなくなったり、人によっては一日中会議をするはめになることもあるので、コアタイムを4時間ほどにするのは良さそう。

全員がオフィスで働いていると会議室が全然空いてないので4時間にまとめることは物理的に不可能だろうけど、リモートワークをしているのなら会議室の問題は解消されるのでこうした時間の使い方ができそう。

また、リモートワークでサボることよりも働きすぎてしまうことの方が問題なので以下のようにしてみるのはどうでしょう、というところも参考になった。

僕らの会社の推奨勤務時間は、週に 40 時間。それ以上働いても、誰にもほめられない。ときにはスパートが必要なこともあるが、普段は長距離走を意識して働いたほうがいい。

つい働きすぎてしまう人は、「1日分の仕事」という区切りをつくろう。1日の終わりにその日の作業を振り返り、「1日分の働きをしたか?」と考えてみるのだ。たいていはイエスと答えられると思う。プロジェクトはまだ終わっていなくても、たっぷり1日分は働いている。だから、すっきりした気持ちでその日の仕事を終えられる。  もしも答えがノーなら、その日は不調だったということだ。そんなときは無理に残業するよりも、いったん落ちついて「5つのなぜ」を考えてみるといい。

リモートワークに関係なくこう振る舞ったら良さそう、と思えた。


「強いチームはオフィスを捨てる」という強い題名に反して、必ずしもフルリモートワーク全振りにするべきという内容でもなかったのもちょっと意外だった。 基本的にはフルリモートワークを推奨している印象だけど、

要するに、フレキシブルにやるということだ。リモートワークは0か1かの問題じゃない。リモートとオフィスを両立することは可能だし、そのほうがスムーズにいくことも多い。オフィスに毎日来る必要があるなら、毎日半分だけをオフィスですごせばいい

といった記述もあった(引用箇所は著者の会社でそのような働き方をしている人もいる、という話。フルリモートワークの会社だけど贅沢でオフィスも持っているので、こういう働き方も選択できるということだった)。そもそも、原題は

とのことなので、日本語訳される際におかしなタイトルになってしまったようだ(日本語版の書影にも左下のあたりにちょろっと書いてあった)。

この点が、この本を下敷きにしてリモートワークを考える際に一番難しいところなのだと思う(0か1の問題であるのなら、この本の結論はフルリモートワークをしましょうという結論にしかならないので)。

例えば「週1日はオフィスに出社してください」という形のリモートワークだとこの本にある

引っ越しをしたいと思うのはめずらしいことじゃない。結婚や離婚、暑さや寒さ、親の状況。あるいはどうしても気分を一新したいこともある。本当は仕事をつづけたいのに、オフィスに出勤しなければならないという制約のせいで、転職を余儀なくされることも少なくない。

「いつかリタイアしたら、世界中を旅してまわるんだ」  そんな夢を持っている人は多い。でも、なぜリタイアするまで待つ必要があるんだろう。歳をとってからでは、旅をするのも大変だというのに。  リモートで働いていれば、いますぐにでも旅にでられる。

といったような働き方は難しくなってしまうわけなので、フルリモートワークとそうでないリモートワークの間には大きな差があると考えられる。 フルオフィスワークからフルリモートワークまでのグラデーションの中でどこを選ぶべきなのか?というのは答えのない問いだと思う(少なくともこの本で具体的な指針は示されていない)。

新型コロナウィルスの影響で「意外とリモートワーク全然いけるじゃん」という人(自分もそうです)も多くなった今、この問いの重要性は改めて以前よりも大きくなっているとも思う。

そしてそうした問いに対する答えは、最終的には価値観の問題に帰着するのではないか、と自分は思っている。 最近印象的だったエントリーとして、

ameblo.jp

一方で、リモートでは一体感、チームワークは損なわれます。また、リモートではかなり極端に成果主義、個人主義に振らざるを得なくなり、それは当社の根本的なカルチャーと相性が悪いです。

当社では、6月1日より毎週月曜日を「リモデイ」として、全社員原則リモートにすることにしました。

というものがあった。サイバーエージェントの価値観はこういう価値観です、ということが打ち出されていて良かった。 (一方で、産経の引用は少し誘導的だと個人的には思っている。大事なのは世の中一般がどうだったのかじゃなくてサイバーエージェント従業員の生産性や意向がどうだったのかなはずなので、主旨とあまり関係が無さそう。)

note.com

などにもあるように企業の対応が多種多様なことからも、やはり正解のない価値観の問題なんだろうな、と思っている。 そして価値観の問題ということは、企業と従業員のカルチャーマッチがこれから改めて試されるのだろうなと考えている。

現在は不況ということもあってすぐには目に見えた動きは出ないかも知れないけど、以前よりもリモートワークを希望する人が減ることはなくても増えはするだろうから、今後時間をかけてオフィスワークからリモートワークへの変動が企業・従業員ともに細く長く続くのではないか、と予想している。仮にそうなるとしたら、フルリモートワーク企業の採用力は地域に縛られないという性質と相まってかなり強くなりそう。

というのが、この本を読んでみた感想でした。時流柄色々と考えさせられたのでちょっと読書感想文が長くなってしまいました。