ゼロ・トゥ・ワン を読んだ

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

知人が絶賛していたことを思い出して読んでみた。

まあ、そんな絶賛するほどじゃないでしょ、というのが正直な感想。 全体的に「ブルーオーシャンを目指そうぜ!」って感じなんだけど、目指し方については特に言及していなくて「君の思い込みはきっと正しいからこうやったらいい感じにイケルヨ!」ということが書いてある。 そしてページの下の方にチマチマと豆知識が書いてあって攻殻機動隊のコミックを読んでいるような気分になる。

帯に書いてあるPayPalとかFacebookとかLinkedInって人々に嫌われているけど使われてはいる典型的なウェブサービスだと思うんだけど、なんというか、そういう雰囲気。 投資家の書いた本って感じで、ドロップアウトした若者を煽って儲けようとしているようにしか見えない。 同意できる内容もあるんだけど、同意できない内容も多い。 そもそも個人的には0 to 1というタイトルがおこがましいと感じていて、そこは産みの苦しみを少しでも知っているならA to A'とかだろと思う。

エビデンスとか特に無くて、本人の考えがずっと書かれている。 根拠が個人の直観だから、読者は内容を自分に合う・合わないでダラダラ読むことになる。 序文通りの逆張りの人間で、逆張りなのだから理論に基づいた主流に反するし、直観に頼った内容にしかならない。

逆張りだから「リーンは間違ってる、なぜなら計画を立てないからだ」とか書いてる。 けど、実際はリーンであっても計画は立てるし、立てた上でピボットしていく。 これって、著者の成功体験であるPayPalだってそうだったって書いてあるし、度々触れられるFacebookだって最初から今の事業イメージではなかったはずで、結局「俺は逆張りだぜ!」というアピールにしかなっていない。 言っていることがリーンと全く違うということはない。

良いこと書いてあるな~と思う箇所もあった。 10年後のイメージを描ける事業をやりなさい、っていうのは正しいと思う。新規事業、意外とこの点が抜けていることが多い。 ユナボマーの下りも個人的にはおもしろかった。「世界が成熟した結果、殆どの人間に偉業の機会は残されていない」みたいなの。とはいえ、特にそれに対して答えを出せていないし、どちらかと言うと僕は否定されている考えに共感する。個々人に求められる専門性はどんどん上がってきているのだから、ブレイクスルーが起こって平均寿命が200歳になるとかない限りこの主張は正しいんじゃないか。コミュニティ論みたいなのに通じるところがある感じ。 あとは、全体を通してスタートアップのダイナミズムとか著者の感じた閉塞感みたいなのは伝わってくる(ちょうど最近読んだ孫氏とクラウゼヴィッツが出てきたりしてなるほどネと思った)。そういう感覚が伝わってくる本は今まであまり読んだことがなかったので、良かった。

読んでいて思うのは、結局この人の主張の裏付けはこの人が成功者であるということで、それって因果関係が逆転してるよなということ。 この本も著者の言う「営業」なんじゃないの?? というわけで、今読む価値はないと思う。今読みたいと思っている人も、とりあえず1年は待っても良いんじゃないか。

試しにこの手の新書を読んでみたけど、やっぱり今の自分は既に評価された本を読むべきだよな……と改めて思った。