組織変革の進め方 - shimobayashiパブリックの文脈で他者と働く を読んだ - 下林明正のブログの次には何を読もうかと考えたときに、結局、何であれ出発点は自分でしか無いし、公私ともに自分に対して課題感も大きかったのでそれっぽい本を読むことにした。
仕事での成果や良好な人間関係、そのカギは「自己認識」にあります。しかし、多くの人は自分を見誤り、思い込みにとらわれていることに気づかず、自分の可能性を狭めてしまっているかもしれません。
本書は、ビジネス界でも活躍する組織心理学者が、膨大な先行研究と自身の研究・実践をもとに、自己認識の構造を理論的に解明し、エビデンスにもとづいたより深く自分を知るための方法、その気づきを行動に変える方法を伝えます。
自分が思う本著の大筋は、
- 成果を出すには自己認識が大事
- 多くの人は自己認識ではなく自己欺瞞にとらわれている
- 自己認識は以下の2つで構成される。重要な点として、どちらか一方が高いからといって、もう一方も高くなるようなものではない
- 内的自己認識: 自分自身を明確に理解する力のこと。これが欠けていると、自分にとっての成功や幸せが分からないため実りない仕事や関係を続けてしまう
- 外的自己認識: 他人が自分をどう見ているか理解する力のこと。これが欠けていると、周囲との関係を維持することができない
- 自己認識を持つ人たちは共通して以下の7つのインサイトを持っていた(そして巻末資料にそれぞれについて自己認識を深める質問集が用意してある)
- 価値観(自らを導く行動指針)
- 情熱(愛を持っておこなうもの)
- 願望(経験し、達成したいもの)
- フィット(自分が幸せで存分に力を尽くすために必要な場所)
- パターン(思考や、感情や、行動の一貫した傾向)
- リアクション(自身の力量を物語る思考、感情、行動)
- インパクト(周りの人への影響)
- 内的自己認識・外的自己認識を高めるための方法論
- 考える=知るではない。反芻ではなく内省することが重要
- 他者の自己認識を高める方法論
- 組織
- 個人
- 手を出すべき人と出すべきでない人がいる。3タイプに分類し、指針を示す
という感じだった。
以下に読んでいて気になった点をまとめる。
そして現在の職場環境ではそれを実現することがおそらく不可能であるため、彼は会社を辞めざるを得ないと悟った。
- 時間は有限なので組織変革などもどこかで見切りをつける必要はあり、こういう観点で判断すると良いのだなと感じた
周りへのインパクトに気づくには努力と鍛錬が必要ではあるが、身につけることはできる。自身のインパクトを知るために身につけるべき重要なスキルは、視点取得、つまり他者の思考や感情を想像する力だ(これは実際に他人と同じ気持ちになる共感とは違う)。
- これまでなんとなく共感する力が重要で、自分には共感する力が欠けているのが問題だなと思っていたのだけど、そうではないということで少し希望が持てた
- あんまり関係ないけど対人ゲームでも他者の視点を考えるスキルが欠けていてあまりうまくいってないなと思うので、ここはがんばるとお得度が高いかも知れない
- 視点取得のためにズームイン・ズームアウトという手法がある: ZOOM IN / ZOOM OUT — REVEL
自己認識をめぐる大きな間違いのひとつは、「ひたすら自分の内側を見つめればいい」というものだ
- この本は他人からのフィードバックを重要視している
七つの柱すべてにとって、一番大切なのは内側の視点と外側の視点の両方を持つことだ。それができて初めて、自分自身のことや、自分がどう見られているかを真に理解することができる。
- ということなので、内的自己認識・外的自己認識とインサイト七つの柱は掛け合わせで使うものっぽい
このフィードバックは仕事仲間からの妨害行為だと考えたが、実際その通りだった。これまでに学んでいた信頼できる自分像と照らし合わせて考えてみると、このフィードバックは、彼女自身が問題なのではないと気づくきっかけになった――問題は、食うか食われるかの職場が彼女に合う環境ではなかったことだった。
- フィードバックを重要視しておきながら鵜呑みにするなよということで、おもしろい。そして難しい
最初にすべきは、マッコールらが言うように、「苦しみに反応するのではなく、受け入れること」だ
- そうだね
- 銃夢でもガリィが同じようなことを言っていたような
- しかしどうやってそうしたらいいのかは「気をつける」以上のことはよく分からない
外科研修医の技術に対する自己評価は、資格試験でのパフォーマンスと実質的になんの相関関係もなかった(だが。さいわいにも、だからこそ資格試験というものが存在しているのだろう)。
- おもしろい
- 我々の業界だと資格と実務はあまり関係ないことも多いが……
- ダニング=クルーガー効果 - Wikipedia
ある研究参加者は12パーセンタイルのスコアにとどまったにも関わらず、62パーセンタイルに記録されたと誤った推測を行った
- 有名なやつ
- 耳が痛い
- 現状に満足すると成長が止まるみたいな理論?モデル?が世界標準の経営理論 を読んで エンジニアリング組織論への招待 への理解も深まった - 下林明正のブログあたりで紹介されてた気がするけど、それとも関係あるかも知れない(能力が低い人は現状に満足しているので成長することもない)
- インポスター症候群 - Wikipediaとも関係あるかも知れない。こっちも有名なので、調べたらなんか出てきそう(調べてない)
- 認識の盲点・感情の盲点・行動の盲点
- シングルループ学習とダブルループ学習
- シングルループ学習: 自分自身や世界についての根本的な前提に対立するデータを見ようとしない思考
- ダブルループ学習: 自分の価値観や前提を疑うこと、そしてさらに重要なことに、他者からも疑問を投げかけてもらう点が含まれる
「創意工夫し、生産的で、目標を達成すること」に慣れた成功をおさめる人間たちには特に難しいものだと突き止めた。そすいた人々は、いま持っている前提で成功をおさめてきたのだから、その前提に正しい部分があることは間違いない。しかしそうした人々が気づいてないことが多いのは、成功を続けていくには、慣れ親しんだパズルのピースを引っ返すことがどれほど大切かということだ。では、どうすればパズルのピースをひっくり返す方法を学ぶことができるのか?そのひとつのアプローチが、過去にした予測と実際の結果を比較検証する習慣を身につけることだ。
しかし過去を振り返ってではなく、リアルタイムで自身の前提を特定したい場合はどうすればいいんだろう?
事前検死(失敗の事前予測)を推奨している。「1年後の未来にいるとしよう――私達は計画を現在のまま実行した。結果は散々だった。どうして散々な結果にいたったか、そのあらましを記してみよう。」
- Double-loop learning - Wikipedia
誰も認めたがらなかったが、自尊心が人生における成功の予測材料になるという考えは、率直に言えば、まったくもって完全に間違っていたものだった。
- 直感に反するけど、そうなんだーというおもしろさ
- 自尊心 - Wikipedia
ここまで、自身の欠点を見ないでいると失敗につながることを紹介してきた。しかしながら、私達が研究した自己認識ユニコーンたちは、驚くべきパターンを示していた。限られた特定の状況においては、戦略的に「バラ色のメガネ」をかけ、具体的なプラスの効果を得ていたのだ
失敗できない状況では、目を背けて気を休めるという贅沢はできない。
どうすれば、色がメガネをかけるべきときと、はずすべきときを見分けることができるだろう?目安としては、絶え間なく挑戦を続けてきて気力を養う必要があるときは、粘り強く続ければ成功できる場合は、フィールグッド効果が役に立つ
- フィールグッド効果:
たとえば職場において、自分は特別で素晴らしいのだと考えている人間は、一緒に働く人々を苛立たせるだけならまだ良いほうだ。最悪の場合、そういう人間はほんのわずかな批判にも向き合う備えがまるでなく、ほんの少しの失敗でくじけ、当然だと思っている「最高」への道のさなかで些細な障害に行き当たっただけで打ちひしがれる
自己認識へと向かいたければ、次の3つの戦略を検討してみる価値がある。その3つとは、「インフォーマー」になること、謙虚さを養うこと、自己受容に励むことだ。
- ミーフォーマー: SNSへとにかく自分のことを周りへ知らせるために投稿している。全体の80%
- インフォーマー: 自分とは関係ない情報(役に立つ記事、興味深い考察、笑える動画など)を投稿する。全体の20%。
- ミーフォーマーに比べ、インフォーマーは友人が多く、豊かで満足度の高い関係を築く傾向にある(らしい)
謙虚さとは、自分の弱点を理解し、正しいあり方から目をそらさないことであり、自己認識にとって不可欠な要素だ
自己受容(自己への慈しみと呼ぶ研究者もいる)は、自分についての客観的現実を理解し、その自分を好きになろうと決めることだ。完璧であろうとするのではなく(あるいは自分は完璧だと思いこむのではなく)、自己受容する人々は、自分の不完全さを理解し、許すのである。
では、どうすれば自己受容を高めることができるのか。そのステップのひとつは、心のつぶやきを意識することだ。
役に立つ問いかけとしては、次のようなものがある。「いま自分に言ったことを、自分が好きで尊敬している人にも言えるだろうか?」
- Self-Compassion Exercises by Dr. Kristin Neff
- 自分を仲の良い友だちのように扱うテクニックは役に立ちそうな気がする。客観視できるし、必要以上に批判的にならずに済みそう
- 内省は効果ナシ!?正しく自己認識をする方法を知ろう――『insight(インサイト)』 | GLOBIS 知見録
大まかな目安としては、「なぜ」という問いは基本的に自分の周りを理解する際に役立ち、「何」という問いは基本的に自分を理解する際に役立つ。
- 反芻: 自分の恐怖や、欠点や、不安にひたすらこだわる状態
- 反芻を止めるテクニック
周りの人は、このことを私と同じくらい気にしている?
うまく学ぶというマインドセット――つまり、パフォーマンスではなく学びに焦点を合わせること
気晴らしのテクニック
たとえば掃除をするとか、友だちに会うとか、エクササイズなど、すぐにポジティブな結果が見える種類のもの
なぜか役に立つ思考停止という方法
事実確認
- マム効果 【マムコウカ】 - 広辞苑無料検索 心理学辞典
- 適切なフィードバックを得るには適切な人を選ばなければならない=愛のある批判者
- 3Rモデル
- ステレオタイプ脅威 - Wikipedia
(前略)レヴィはコミュニケーションが自分の強みには決してならないことを受け入れた。そして彼はそれで問題なかった。
「今後、私がおはようと声をかけることはあまりないでしょう」
「ですが、私はみなさんのことを真剣に思っているのです――心の底から――そして、それを示す私なりの方法はこうです。私はそれを、みなさんに安心して働ける場所を提供することで示します。給与体系を明確にすることで示します。あなたが仕事にやりがいを見いだせるようにすることで示します。渡したこれらをみなさんに約束します」
- いいはなし
- オーセンティック・リーダーシップとは―その意味と発揮方法 - 『日本の人事部』
- 心理的安全性
- グーグル 成長のカギは「弱さを見せ合えるチーム」|NIKKEI STYLE
実際、グーグルによるリサーチでは、心理的安全性を生むのに最も大きく貢献する要素は、弱さを見せること、つまり自分の欠点を進んで周りに認めることだと判明した。しかも、それはトップから始めなければならない。レヴィ・キングは言う。「多くのリーダーは、『(弱さを見せたって)安全ですよ』なんて言うが、自ら進んでそうしようとはしない。口だけのものにしてはダメなんだ。この会社では、ミスを犯してもいいのだと自分が示さねばならない――この会社ではお互いを許し合い、ミスは前向きな行動の結果だと信じているから」
思い込みに囚われた人の目を覚まそうとする行為は、うまくいってもリスクがあるもので、最悪の場合は破滅的な事態に陥る
自分が思っているような自分でないのだとフィードバックを受けたとき、人は自分が無能であると感じるだけでなく、「自分の存在そのものが危機にさらされていると感じると、大きく方向性を見失い、心理的な支えを失って苦しむ」。かなりの打撃でしょう?
- 無駄骨タイプ:
自分こそ正しいのだという、怒りの混じった、揺るぎなき熱い気持ちで思い込みにとらわれている。自分の考え以外の選択肢を考えられない(あるいは考えようとしない)ため、無駄骨タイプの好ましくない特徴に光を当てて暴こうとするものは、その手に持った懐中電灯をピシャリとはたき落とされてしまう。
- 分かっているが気にしないタイプ:
自分の行動(と周囲へのネガティブな影響)をよく把握している――が、その上で行動を変えない。なぜか?それは自身の非生産的な(横暴と言っても過言でないことが多い)行動が、自分の欲しい物を手に入れるのに役立つと心から信じているからだ。
- 誘導可能タイプ:
何かがおかしいと分かっていながらも、何がおかしいのか合図を読み取ることができないでいた
- 無駄骨タイプ:
自己認識とは、充実した人生にとって必要条件ではあるが、十分条件ではないということだ。
たったひとつのことが、インサイトに基づいて行動できる人間と、そうでない人間を分けている。それは物事をひとつのステップにひとつずつ取り組む能力だ。
構造的にまとめられてないけど文量がおおくてしんどいので勘弁してください。
実際には結構前に読み終わっていたのだけど、巻末の宿題みたいなのをやろうとしたらなかなかやる気が出なくて読書感想文を書くまでにめちゃくちゃ時間がかかってしまった。あまり手を動かすのは向いてないかも知れない。
巻末の宿題をやって分かったのは「(知らないと知らないことが多そうなので)自己像を見直すフィードバックをもらったほうが良い」のと「頻繁に反芻をしているのでやめたほうがいい」ということだった。ので、3Rモデルを採用してフィードバックを受けたり、紹介されているような反芻を止めるテクニックのことを意識した方が良いかも知れない。
また、これは個人的な印象なので間違っている可能性もあるけど、自己受容のスキルが低いのでこうした問題があるような気がする(自己受容できないので自己像が歪んでいる、自己受容できないので反芻を繰り返している)。ので、自分自身を仲の良い友だちのように扱うテクニックも使っていくほうが良いかも知れない。 自己受容するとそこで満足してしまうので成長が止まってしまうような気もするが、自己受容は「自分の不完全さを理解し許す」ことなので満足を意味するわけではないし、なんにせよ誤った自己認識に基づいて行動をしていても成果も成長も得られないというのがこの本の主張だと思うので、あまり気にしなくていいだろう。 自分の直せない欠点を認めて無理に直そうとしない話(レヴィのコミュニケーション能力)と合わせて、むしろ自己認識が成長につながると考えたほうが良さそう。
組織変革の文脈で言えば、誘導可能タイプに関する話や、思い込みに囚われた人の目を覚まそうとする行為はうまくいってもリスクがあるものだという話のあたりはぜひ念頭に置くべき話題だと感じた。
自分のメンタルモデルを更新されたという点で印象に残ったのは、自尊心があったらいいというものではないという話だったり、内省と反芻は違うという話、があった。
良い本だったかどうかでいうと先述のような気付きがいくつか得られたので良い本だったと思うんだけど、読むのがいろいろな意味でしんどかったのであんまり気軽におすすめできない感じのある本でもあった。