下林明正のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

モチベーション3.0 を読んだ

モチベーションについて学ぶ必要性を感じはじめていたので、自分が読んできたような本でよく参考書籍として紹介されている印象を持っていたこの本を読んでみることにした。

以前は電子書籍があったような気がするけど見つからなかったので、中古で紙の本を買って読んだ。

この本の内容についての説明は、巻末にあるツイッター向けのまとめが簡潔で良い。

アメとムチは前世紀の遺物。〈モチベーション3.0〉によると、二一世紀の職場では、〈自律性〉〈マスタリー〉〈目的〉へとアップグレードが必要。

もう少し詳しいまとめや参考書籍なども巻末に載っているので便利。

理解を深めるためにも自分なりにまとめなおしてみる。

  • 多くの企業は外発的動機づけに着目した科学的管理法的なアプローチを採用している
  • これは不確実性の低い仕事に対しては有効だが不確実性の高い仕事に対してはむしろ逆効果であり、異なるアプローチが必要である
  • 外発的動機づけに着目したアプローチをモチベーション2.0と名付け、内発的動機づけに着目したアプローチにモチベーション3.0と名付けた
  • モチベーション3.0にとって重要なのは自律性、マスタリー、目的である

といった内容だったかと思う。

留意しておきたいと思った点には以下のようなものがあった。

  • モチベーション3.0はすべてを解決するものではない
    • 不確実性の低い仕事が存在することを認めているし、そうした仕事にはモチベーション2.0が有効なことも認めている
  • 権限委譲やフレックスタイムという考え方も自律性の観点では筋違い、という考え方の様子

個人的な感想としては以下の通り。

  • 事前に想像してたよりもスケールの大きな話だった
    • テイラー主義・フォード主義からの転換、みたいな雰囲気がこの本でもある
    • 人間性の肯定、みたいな文脈もある
      • P207 つまるところ、この不一致を解消し、モチベーションについての理解を二十一世紀に持ち込むことは、ビジネスにとっても重要となるだけではない。人間性の肯定でもあるのだ。

  • 自分がこの本を読むタイミングとしてはちょうど良かった。ソフトウェア開発と人間性をつなぐ欠けていたピース感がある
  • 不満としては、元々は他人を特定の対象についてモチベートするにはどうしたら良いかということが知りたかったので、そういうテクニックは得られなかった
    • この本の内容に従うなら、自律性の観点からむしろそういう考え方自体がお門違い、ということになりそう。まあ、実際そうなのかも知れない
    • ただ、それならそれで人間が何かに深い興味を持つメカニズムについて言及は欲しかった
      • 子どものように何にでも興味を持ちましょう的な感じの記述はありつつも、実際は子どもでも深い興味を持つ対象はまちまちなので、何らかのメカニズムはあるのだろうと想像している
    • それが分からないので、職場においては採用や人事異動が根本的に重要、という以上の考えを得られていない
      • 適切な採用や人事異動を前提として色々とやれることがあることは分かった
      • 強いて言うならソーヤー効果の話はあったけど、求めていたものではない感じがする
  • また、その人が興味を持つ対象が金にならない場合どうするの?というところもあまり見えてこなかった
    • 例えば、バンドマンが食うために嫌々バイトをせざるを得ない、みたいな状況
    • WILL, MUST, CANが重なる適切な社会との接点を見つけましょうという話に落ち着くしか無い気はしつつ、誰でも見つけられるわけではない感じもするので、手を差し伸べられてない感じに残酷な印象を受ける
  • ダグラス・マクレガーのX理論Y理論の話も文中によく出てくるけど、Z理論について特に触れられていないのは気になった。Z理論があることは知ってるけど内容はよく分かってないので、引っかかってる、という程度
  • OSのメタファーは正直ピンとこない

これらも関連記事としておもしろいかも知れない。

自分の期待を完全に満たすものではなかったけど、想定外に良かった部分もあったし、時間を割いて読んで良かった。

年末年始はエクストリームプログラミングとこの本を読もうと思ってたので、ちゃんと読めたのも良かった。