下林明正のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

学習する組織 を読んだ

引き続き組織に働きかけるスキルを得たいと思って読んだ。

主旨としては、システム思考で組織を全体最適化をしていこう、その際に従来のメンタルモデルと乖離しているとメンタルモデルに引きずられて正しく最適化ができないのでメンタルモデルも更新しよう、それぞれの取り組み方について教えます、ということだと受け取った。

この本に関して全体的にまとめようとするとかなり大変なので、今の自分にとって有用そうなところをシュッとまとめておく。

  • 巻末のUプロセス
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    • 初見では多分意味不明だと思うけど、この本を読むとなんとなく分かります
  • メンタルモデルについて
    • マネジメントに携わる人ならば誰でも知っていることだが、すばらしい考えなのに実行に移されないものはたくさんある。見事な戦略ではあるが行動につながらない。システム的な洞察が経営の方針に生かされない。新しいアプローチが、良い結果を生み出すことが試験的導入によって明らかになり、誰もが満足しているのに、広く採用されない。この「あと一息でいうところでの失敗」は、意志の弱さやためらい、システム的な理解の不足が原因なのではなく、メンタル・モデルが原因なのだという認識が次第に広まっている。

      • このあとに一度起こした変化もメンタルモデルに引きずられてもとに戻ってしまう例示などが出てくる。たしかに、一度やり方を変えてそれでうまくいったとしても、もとに戻ってしまうような例も見てきた。メンタルモデルをうまく更新できていなかったということなのかも知れない
    • どの会社にも共通していたのは、大きく分けて2つのスキル領域―振り返りのスキルと探求のスキル―を伸ばすことだった。振り返りのスキルは、考えるプロセスのスピードを緩めて、自分のメンタル・モデルをどう形作るのか、それが行動にどう影響するのかをできるだけはっきり意識することにかかわる。探求のスキルは、とくに複雑で対立のある問題に対処する際、他社との面と向かった話し合いでどうふるまうかにかかわる。

    • 私たちがもちあわせていないのは、『振り返りのための振り返りをする』時間です。行動に結びつかない振り返りは、社員に『そんな時間はない』と思わせてしまうのです。

      • これはもっと後半に出てくる一節だけど関連があるのでここで
      • 行動につながるふりかえりをしていきたいものですね
    • メンタル・モデルのディシプリンの実践がめざすところは、必ずしも合意や意見の一致ではないことにくれぐれも注意することが重要である。いろいろなメンタル・モデルが同時に存在することもあるし、食い違うメンタル・モデルもあるだろう。

  • システム思考について
    • ディシプリンを実践することとは手本に倣うこととは違う。新しい経営のイノベーションがいわゆる大手企業の「ベスト・プラクティス」という形で説明されることが非常に多い。(中略)彼らはみな部分を見て、その部分をまねる。彼らが目を向けないのは、すべての部分がどう連携しているかです

      • 先ずは形から入ろうだけだとこうなりがち
    • 古代スーフィーの物語の現代版では、ある人が通りすがりに、街灯の下で四つん這いになっている酔っぱらいに出会う。「手伝いましょうか」と申し出て、その酔っぱらいが家の鍵をさがしていることが分かる。数分してから、「どこで鍵を落としたのですか?」と聞く。酔っぱらいは、家の玄関の前で落としたと答える。「じゃあ、なぜここでさがしているのですか?」と、その人は尋ねる。すると「だって、うちの戸口の近くには灯りがないからさ」と酔っぱらいは答えるのである

      • これ仕事に限らず汎用性あるよねと印象に残っている
    • 難題に取り組むということは、高いレバレッジがある場所、つまり最小限の努力で、持続的に大きな改善を引き起こすであろう変化を見つけることである場合が多い。唯一の問題は、レバレッジの高い変化は通常、システム内にいる大部分の参加者にとって非常に見えにくいことである。そのような変化は、明らかな問題症状と「時間的にも空間的にも近い」ところにあるわけではない。

    • システム思考のディシプリンの本質は、意識の変容にある。線形の因果関係の連なりよりも、相互関係に目を向ける。スナップショットよりも、変化のプロセスに目を向ける。

    • 学習する組織にとって、マネジャーたちがシステム原型の観点から考えるようになって初めて、システム思考は活発で日常的な動作主となり、いかに私たちが自分たちの現実を生み出すのかを絶えず明らかにするようになる。

    • 巻末のシステム原型
      • 類型みたいなのがたくさん紹介されているので、多分ここから当てはめて考えを整理し始めるとやりやすいと思われる
      • しかし正直読み解きにくい。慣れが必要かも
  • 共有ビジョンについて
    • 共有ビジョンを築くディシプリンを習得する第一歩は、ビジョンはつねに「上」から申し渡されるもの、あるいは組織の制度化された計画立案プロセスから出てくるものだという既成概念を捨て去ることだ。

      • 割とこう思ってしまいがちだしそう思ってしまうと不満があっても去ることしかできないので、非常に勇気づけられる一節
    • ビジョンは問題への解決策ではない。そう見るならば、モラルの低さや戦略的な方向性の不明確さといった「問題」がなくなってしまえば、ビジョンを後押ししていたエネルギーも消えてしまうだろう。共有ビジョンの構築は、リーダーの日常業務の中心的要素と考えなければならない。つねに進行中であり、終わりはない。それは実際、企業の「経営理念」―ビジョンそのものだけでなく、企業の目的や基本的価値観も含めたもの―を立案し、育成するという、より大きなリーダーシップ活動の一環なのだ。

  • チーム学習について
    • 一般に流布していいる社会通念には反するが、対立がないのが優れたチームではない。それどころか、私の経験では、絶えず学習しているチームの何よりも信頼できる指標の一つは、考えの対立が目に見えることだ。優れたチームでは、対立が生産的になる。

      • 心理的安全性とかコンフォートゾーン・ラーニングゾーンの話も多分こういうことだと思うんだけど、あまりそういう理解は広まっていない気がする
  • 戦略について
    • 熱心な推進者は「改善しつつあること」に目が行くばかりに、冷めた見方や懐疑的な見方をする人たちからは不十分だとみなされるという、その成果の別の側面を軽視する傾向があるかもしれない。

    • 最終的に私達は、こうした数々の問題を「狂信者症候群」と名付け、そしてこれが、将来有望なイノベーションが往々にして普及しない第一の理由だということに気づいたのである。

      • このあたりも身に覚えがある
    • 「献身的な人間と狂信的な人間とを最終的に区別するのは何か」。彼の出した結論は、「必然性」である

      • これもあとの方で出てくるけど関係あると思ったのでここで
    • 私達は、企業の免疫系の壁にぶつかった変革者の問題を理解するようになったとき、息の長いイノベーションには、2つの文化を併せ持ち、それぞれの基本原則を尊重しながら、2つの異なる世界を効果的に行ったり来たりするリーダーが必要だということを理解し始めたのである。

      • そうだろうけど、大変そう。あまりできる気がしない。T型人材とかH型人材みたいな話があるけど、こういう切り口でも同様の人材が変化を起こせるという感じなのかな
    • サイヤンは上司を相手にするとき、「約束は控えめに、結果は期待以上に」をマネジメントの信条として取り入れた。これは期待をコントロールするうえで実に慎重な戦略である。

あとは結構「自己マスタリー」についても出てくるんだけど、自己マスタリーについてはしっくりきてないというのが正直なところ。そのあたりはまた読み直したほうが良いのかも知れない。


この本を読んで自分が実際にはじめたこととして、自分がずっとやりたいと思っていることを個人ミッション・ビジョン・バリューという形で整理し直してみた。

まだはじめたばかりなのでうまくいくのかは分からないけど、整理はしやすかったし、枝葉の部分が変わってもミッションのところはそうそう変わらないだろうという安定感を感じている(提案という書き方だと手順と実現することが混然としていたのでそうなってなかった)。また、個人というプレフィックスをつけると気軽に書きやすい。

これまではとにかく提案・実行・成功・横展開というくらいのイメージでしか考えられてなかったけど、個人的なビジョンから共有ビジョンへ転換させて広げていくというもう少し周囲を巻き込んでいくような進め方もイメージできるようになった。という感じで、あとは実践しつつ行き詰まったりしたらまた読み返したりしていくと良いのかな、と思っている。

まあまあ長くて読むのしんどい本だったので気軽におすすめできる感じではないけど、先述のような観点を導入してくれたという点では良かった気がする。

次の読書活動としては、先ずは諸事情により並行して読み始めてしまったINSPIREDを読み終えたら、次はFearless Changeを読んでみようかなと思っている。