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一九八四年[新訳版] を読んだ

10年くらい前に旧訳版を読んで、非常に衝撃を受けた。

作中の文章を引用するなら、 その本は、もしばらばらの思考を自分できちんと秩序立てることができるなら、自分の言いたかったことを言ってくれているのだ。これは自分と同じような精神、しかもはるかに強靭であり、ずっと論理的で、恐怖に怯えてなどいない精神が生み出したものなのだ。最上の書物とは、読者のすでに知っていることを教えてくれるものなのだ、と彼は悟った。 といった具合だ。 今となっては当時の自分が何を考えていたのかよく分からないが、こういった感想を持ったことは覚えている。

今回改めて新訳版を読んで、当時ほどの興奮は無かったものもやはりおもしろい本だと感じた。 最も有名なディストピア小説であるし、その辺りはいまさら僕が言及することでもないだろう。

手元の旧訳版と比べると、文体が現代風になり読みやすくなっている。この点が端的に現れているのは、旧訳版では"doubleplusgood"であった箇所が新訳版では"倍超良い"になっている点だろう。旧訳版の初出は1972年で新訳版の初出が2009年なので、37年の間に日本語が変化しこのような翻訳が可能になったと思われる。

組版も改善されていて、文章が適切なタイミングで現れるようになった。 あとがきも、旧訳版ではオーウェルの分析といった内容だったものが、新訳版ではトマス・ピンチョンによる作品の解説になっている。その解説はおそらく2003年に書かれたもので、当時のアメリカ社会と照らしあわせながら解釈されている。 この解説に関しては好みが分かれそうだが、僕としては作品に対する理解が深まり読んでいて楽しかった。

今や基礎教養のような小説なので、とりあえず読めばいいというレベルだと思う。とてもおすすめ。