譲り受けていたものを気が向いたときに遊んでいた。
結局、魔法使いを倒すことはできたのだが手持ちの鍵が錠前に合わず悲嘆にくれる結果となった。
感想としては、先ず雰囲気が良い。生活感のあるダンジョンが表現されており、Wizardry Vからこの手の道に入った身としては「これだよ!」という感じ。精緻で汚い挿絵も華を添えている。
次に、ルールが良い。できる限り簡単にしながら斬り合いの雰囲気を残している。 また、運だめしをする度に運が減っていくのがリスクとリターンの関係にあって、プレイヤーに能動的な選択の余地を提供している。結果として、没入感を高めている。
ただし、ところどころルールが分かりづらく感じることがあって、間違って遊んでしまっていた部分があった(具体的に言うと、月の楯と宝箱の錠前の判定)。
特にマッピングもせずに遊んでいたが、見事に途中で迷って投げ出しそうになった。それでも辛抱強く続けてみると、なんとか先に進むことができた。作者の思惑通りに踊らされている感じだ。
そもそもなぜ遊ぼうと思ったのかというと、ファンタジーRPGの歴史を体感してみたかったからというところが大きい。
その辺りの話はゲームブック - Wikipediaに意外と良さそうにまとまっていた。
これまでなんとなくWizardryはゲームブックブームの後にその影響を受けて開発されたのではないかと思っていたのだけど、調べてみるとWizardryが81年発表で火吹山の魔法使いは82年だったのでそういうわけでもなさそうだ(ゲームブック自体は火吹山の魔法使い以前にも存在していたようなので影響は受けていただろうが)。
WizardryはD&Dの戦闘シミュレーターとして端を発しているらしいということを記憶しているが、それに対して火吹山の魔法使いは当初からTRPGへのゲートウェイメディアとして開発されたようだ。ファンタジーRPGブームを背景に、様々なアプローチが模索されていたのだろう。
同時期に発表されたRogueにしてもイェンダーの魔除けを持ち帰ることが目的とされているし、エポックメイキングな3作品が共通して「魔法の品を迷宮から奪還する」ことを目的としているのはおもしろい点だと思う。当時のTRPGではそのようなシナリオが一般的だったのだろうか。よく分からない(僕は同じくエポックメイキングとされるUltimaシリーズのことは殆ど知らないのだけど、Ultimaの方はもっと風呂敷を広げた独特な雰囲気だ…)。
シャドウゲイト(87年)のようなゲームもゲームブックから色濃く影響を受けているのではないかと思っていたけど、少し調べてみたところそれほど直接的に影響を受けているわけでもなさそうで、どちらかというとアドベンチャーゲームの直系の子孫という雰囲気だ。 まあもっとも、渡し舟の描写など火吹山の魔法使いとかなり近いものを感じるし、少なからずゲームブックの流れも汲んでいただろうと思う。
そんなわけで大雑把に言って僕の脳内では、
ウォーゲーム→TRPG→ゲームブック→CRPG→MORPG→MMORPG→広義の意味でのソーシャルゲーム(デモンズソウルやブレイブリーデフォルトなど、適当に垂直分割するタイプのネットワークゲーム)
というようなジャンルの推移をファンタジーRPGは辿ってきているということになっている。
最近はまたボードゲームやTRPGが脚光を浴びつつある感じもあるので(僕の世代はCRPGネイティブなので"また"という感じではないけど)、定期的に先祖返りしつつテクノロジーの発展に合わせてファンタジーRPGの有り様も変わっていくのだろう。
ファイティング・ファンタジー「火吹山の魔法使い」 (〈ファイティング・ファンタジー〉シリーズ)
- 作者: スティーブ・ジャクソン,イアン・リビングストン,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2005/03/26
- メディア: 文庫
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