この記事はCalendar for はてなエンジニア | Advent Calendar 2021 - Qiitaの21日目の記事です。
はじめに
現職で個人的にアジャイル推進活動1を長い間やってきているのですが、正直さほど変化を起こせていないまま時間が経っていました。
しかし、最近は以下のような吉兆がみえてきています。
アンケートを取った時点では「誰かプロジェクトマネジメントが得意なスタッフにやって欲しいが、得意なスタッフがいない」というチームも多かったのですが、先述のプロジェクトマネジメントに関する関心の高まりなどから「自分も開発プロセス改善をしたいが、1人では難しいのでアドバイスが欲しい」といったスタッフの参加も増え、状況を少しずつ変化させられています。
(はてなの開発プロセスを改善する、すくすく開発会とプロジェクトテンプレート講義のご紹介 - Hatena Developer Blogより引用。)
これは、
- 一度に組織全体を変革しようとせず、小さく初めて少しずつ育てていく必要がある
- 提案をまとめただけでは不十分で、周囲を巻き込みつつ粘り強く推進し続ける必要がある
- 最初からマスタープランを目指すのではなく、学習しながら現実にフィットさせていく必要がある
(Fearless Change を読んだ - 下林明正のブログより引用。)
でいうところの「周囲の巻き込み」が進んでいる状態だと捉えています。
この記事では、そうした変化を起こせた要因について少し考えてみようと思います。
周囲を巻き込む要因になったできごと
まずは何が要因になったのか考えてみると、やはり はてなの開発プロセスを改善する、すくすく開発会とプロジェクトテンプレート講義のご紹介 - Hatena Developer Blog で紹介した「プロジェクトテンプレート講義」が要因だったように思います。
そもそもこの講義はスキルの底上げを狙ったもので、周囲の巻き込みを主に意図したものではありませんでした(もちろん、講義の終わりにすくすく開発会への参加を促すなどの宣伝活動はしましたが)。 さらに言ってしまえば、プロジェクトテンプレート講義で教えたプロジェクトテンプレート自体はさほど使われていないというのが実情です。
それにも関わらずなぜこの講義が要因になったのかというと、プロジェクトマネジメントやスクラムなどの開発プロセスに対する認知を「未知の未知」から「既知の未知」へ引き上げたからなのではないか、と考えています。
ここでいう「未知の未知」とは、そもそもプロジェクトマネジメントや開発プロセスについて知識がないので現状に対してそもそも課題を認知できない状態です。 そして「既知の未知」とは、プロジェクトマネジメントや開発プロセスという概念があることを知ったが、具体的な知識は無いような状態です。プロジェクトテンプレート講義によって 「よく分からなかったが自分たちが知らないことがある、できていないことがある」という自覚が生まれたことによって、今起こっている問題がそうしたところに起因するのではないか?と疑える状態に移行したのではないか、と考えています。
「既知の未知」状態になってそこに課題を感じたら、あとは「既知の既知」つまり概念も具体的な知識も備えた状態へ移行しようとする人たちが出てくるのは自然なことで、その流れですくすく開発会への参加者は増えたのではないかと推察しています。
周囲を巻き込む要因にならなかったできごと
逆に、巻き込みを意図していたものも今のところうまく巻き込めていない活動についても考えてみます。
とあるハウトゥーを伝えるような活動もしていて、所属するチームではじわじわと仲間を増やせているのですが、全社的にはあまり響いていない状況です。
これは、特定のハウトゥーの話になるとすべてのチームがそれを求めているわけではないので響いていないのではないか、と推察しています。 結局、当事者の課題に根ざしていないと当事者が主体となって話が進まない、ということなのでしょう(だからこそ、所属するチームでは課題を共有しているので、それなりに進んでいるのだと思います)。
しかしながら 開発プロセスの変遷モデル - shimobayashiパブリック でいうフェーズを上げていく上では必要になるハウトゥーだとも思っているので、全社でのボトムアップ路線は据え置きで求められたら応える、という形にする予定です。
また一方で、ボトムアップというよりはむしろトップダウンの視点ではこのあたりに課題感があることは確認できているので、そちらに働きかけていくことは継続していこうと考えています。
まとめ
かんたんにまとめると、以下のようになるかと思います。
- 当事者の課題に根ざしていないと、当事者意識を持って取り組んでもらうことはできない
- 「未知の未知」から「既知の未知」へ移行させることで課題に気づき、当事者が主体的に「既知の既知」へ移行するモチベーションを生むことがある
「未知の未知」から「既知の未知」へ移行させる方法は講義以外にも、勉強会だったり、外部コーチを招くなど様々な方法が考えられそうです。
上述のような取り組みを後追いするような形で組織変革についても勉強をしていたのですが、おそらくこういう形がそれなりにまっとうな組織変革の進め方なのだろうという気持ちになっています。2
まだ吉兆がみえてきただけで十分な変化を起こせているわけではないので、引き続き活動をしていくつもりです。 ボトムアップ方面ではこのまますくすく開発会を通じて学習しながら広めていくで当面は良いと思っているので、並行してトップダウン方面に働きかけてボトムアップ方面がやりやすい環境にできないかを先回りして整備していくような形になるかな、と考えています。
こういった活動を一緒に推進してくれる仲間を探しているので、興味があればぜひお声掛けください。
エンジニアじゃないと推進できないとかそんなことは全然なくて、企画職の方などもすくすく開発会に参加してくれているので、ぜひよろしくおねがいします。
-
開発プロセスの変遷モデル - shimobayashiパブリックでいうところのフェーズ3に行きたい↩
-
組織変革の進め方 - shimobayashiパブリックにまとめています↩