下林明正のブログ

個人的かつ雑多なブログです。

有能なウェブエンジニアをウェブディレクターにすることについて

ありがちな話なのでこのことについてふと考えることが多い。 最初に断っておくと特に結論はなく、ケースバイケースで考慮するべきというのが僕の考え。

それを踏まえて、先ずは良い点について考えてみる。

一番もっともらしい理由は、他のエンジニアが納得しやすいこと。一番戦闘力の高いエンジニアがエンジニア長になって皆を束ねていくという世界観。若く猛ったエンジニアも従ってくれるけど、石器時代っぽい。 次点として、システムの実装を把握しているのであまり滅茶苦茶なことにはなりづらく、安心して任せられるということ。 それ以外にありがちなものとしては、人的コストの圧縮も考えられる。人件費もそうだけど、頭数が1つ増えるだけでコミュニケーションパスは爆発的に増加していくのでコミュニケーションコストの削減にも繋がる。

次に悪い点について考えてみる。

これはまさにピーターの法則そのもので、組織の構造的な欠陥を示している。所詮はエンジニアなので、ディレクションに関しては素人にすぎない。 発想も実装コストに引きずられてしまい、ユーザー視点になり切ることもできない。 また単純に、有能なエンジニアのリソースがディレクションという素人仕事に費やされてしまうため、チーム全体の開発能力が低下する。 最悪なのが、優秀なエンジニアは大体この状況にフラストレーションを感じ、組織から離脱してしまいがちなこと。

といった点を総合すると、短期的に見れば安牌である、と言えなくもない。 技術的に困難なプロジェクトの立ち上げだとか、通常のプロジェクトであっても運用フェーズなどで一旦任せるには悪くない、気がする。とはいえ、長続きはしない。 サービスの継続的成長を志向するのならあまり得策ではない。

では非エンジニア出身のディレクターを据えれば良いのかというと、ディレクションによって結果を出せないとエンジニアとの関係が険悪になりがちで難しい。 モノができる仕事じゃないので、結果を出せないとエンジニアの心を支えるものは何も無い。 エンジニアからしてみれば「わけのわからないことをやらされている」という気持ちにしかならないし、求められるハードルは高い。

もちろんエンジニアリングが分かるディレクターがいれば悩む必要はないのだけど、そういった完璧超人みたいな人は単価が高いのが一般的である。もしくは、実際にはどちらについても素人だったりする。

ということを考えているとエンジニアがもう少し大人になればもっとやりやすい気もしてくるけど、そもそもそういう人間がわざわざウェブエンジニアを職業とする理由も無い気がするので、これが市場原理ってヤツかという気分になってくる。 何かを捨てなければ何かを得ることはできない。